20230202 『そばかす』を観て

今日観た映画:オードレイ・ディヴァン『あのこと』(2021)、玉田真也『そばかす』(2022)

『あのこと』が駅前のミニシアターで今日までの上映なので観に行く。今日の上映が朝の回で、シフトが遅番だったから観に行けた。ラッキーね。歩いて行ったら10分ほど遅れてしまって、もしかしたら最初の重要なシーンを何か見逃してるかもしれないけど。でも観に行って良かった。すごく苦しかった。苦しかったからこそ、映画館という大きなスクリーンから逃げられない場所で観れて良かったと思った。

映画が終わるといい感じにお昼の時間だったので、いろいろ迷って歩き回った挙句、駅ビルにある立ち食い蕎麦屋に初めて行ってみた。あったかきのこ蕎麦430円。どうやらピークの時間に行ってしまったっぽくて、初心者には難易度が高い気がしたけど無事食べれた。きくらげが入っていて美味しかった。

少し買い物をして、一旦帰宅したのち出勤。ポスターを貼り替えるなど。

営業時間が終わったあと、仕事の一環ではあったけど前から観たかった映画『そばかす』をやっと観ることができた。試写だったので一部観れてない箇所もあるものの、本当ならもう少し遅い時期に観れるはずだったから今日観れてかなり嬉しかった。シフトが一緒だったOさんのおかげもあって予定より早めに観れました。ありがとう。

まず、この映画についていいなと思うところは、主人公である佳純のセクシャリティや恋愛嗜好を具体的な名前で定めていないところ。「恋愛しない・性的なことにも関心がない」という場合、セクシャリティでいえばおそらく「アロマンティック・アセクシャル」が近いと思うのだけど、劇中でこの言葉が出てくることは一切ないし、主人公がアロマンティック・アセクシャルを自認していると分かる具体的な描写も特にないので、自分に当てはまるセクシャリティの名称に拠ることなく「そのままの自分でいること」を描いているのがとても良いなと思った。
(この姿勢はもしかしたら「大豆田とわ子と三人の元夫」のかごめちゃんの恋愛観にも似ている気がする)

アロマンティック・アセクシャルを描いた映像作品といえば昨年NHKで放送された「恋せぬふたり」というドラマが最初に思い浮かばれる(そもそもアロマンティックやアセクシャルを描いた映像作品は、世に溢れるラブストーリーを思えばほとんど存在しないに等しい)。このドラマでは、もともと恋愛や性的な関心に違和感を抱いていた主人公が「アロマンティック・アセクシャル」というセクシャリティがあることを知り、自認することから生き方を模索していく様子が描かれている。こういう感じで、いわゆる「セクシャルマイノリティ」と呼ばれるセクシャリティ、ジェンダーアイデンティティの具体的な名称が先行するような描き方は、LGBTQ+を描いたりテーマになっている作品に多いように思うけど、これだとそのセクシャリティがその人の肩書きみたいになってしまう気もしていて。少数派と括られるセクシャリティやジェンダーアイデンティティの存在、その名称を世間に広く浸透させるには効果的なシナリオかもしれない、シネコンで展開されるような商業映画や地上波で放送されるようなドラマだったらなおさら効果があるのかもしれない、けど。セクシャリティやジェンダー以前に、その人がその人であること、その人の好きなものとか、その人にちゃんと名前があるということを、もっと前面に出して大事にしてほしい気持ちもわたしにはあって、その意味で『そばかす』は「とある恋愛しない人の物語」ではなく「蘇畑佳純の物語」として真正面から描かれていて本当に良かったし、観ていて嬉しい気持ちになった。

あと好きなシーンがたくさんあった。
・前田敦子さん演じる佳純の友人・マホちゃんが古来のシンデレラにボロクソ言うところ。全編を通して前田敦子さんがめちゃくちゃ良かった。
・佳純が、伊藤万理華さん演じる妹と食卓で言い争いになって、流れで妹の夫を殴るところ。ちょっと笑った。伊藤万理華さんもめちゃくちゃ良かった。
・三浦透子さん、元々とっても良いお声をしているので、コールセンターの仕事をしている声の耳心地がすごく良かった。
・玄関を開けるシーン
・お父さんの存在
・家族で朝ごはんを食べるシーンで、お母さんに「お行儀が悪い」と言われながらもみんなで笑ってしまうシーン。わたしも観ながら同じように笑っちゃった。
・中学(?)の同級生で保育園の同僚になる男性(ごめんなさい名前が分からない…)
・保育園の子どもたちの恋愛事情
・北村匠海さん
・ラストシーン。今まで色んな映画やドラマで走るシーンを観てきたけど、いちばん好きだと思った。逃げるためではなく、自分の意思で走る。主題歌への流れ方もすごく好き。主題歌も三浦透子さんが歌っているのが、またこの映画らしくてとても良い。

かなり好きな映画にまた出会えて、ふわふわした気持ちで帰る。主題歌を聴きながら歩いた。三浦透子さんと塩塚モエカさんの声似てる、と思ったけどちゃんと聞き比べるとそんなに似てないことがわかった。どちらのバージョンも好き。もう1回は「そばかす」観ようと思う。

 

*もし、上の文章中に誤謬等あれば遠慮なくご指摘いただけたらと思います。